2013-01-01から1年間の記事一覧

「罪と罰」30(1−5)

≪確かに俺はラズミーヒンについこの間また仕事を頼もうとした、あるいは家庭教師の口を手に入れてもらおうとして、あるいは何かしらを・・・――ラスコーリニコフは考えを辿っていった――だがこの今になって、何でもって彼は俺を助けられるだろう?仮に家庭教師…

「罪と罰」29(1−4)

《俺の20コペイカを持っていっちまった――毒々しい物言いをしたラスコーリニコフは一人取り残された。――あいつからも金を取って娘をくれてやればいいさ、それで終わりさ・・・。なのになぜ俺はこんなことにかかずらって助けたりしたんだ!そもそも俺が助け…

「罪と罰」28(1−4)

彼は大急ぎで辺りを見回し、何かを探し求めた。腰を下ろしたくなっていたのでベンチを探したのだが、その時彼はちょうどK遊歩道を歩いていた。ベンチは前方100歩程のところに見えた。彼は出来るだけ急いで歩き出した。だが途中ある小さなハプニングに遭遇…

「罪と罰」27(1−4)

彼は突然我に返り、立ち止まった。 《有り得ない?でもお前は一体どうするつもりなんだ、これをなしにするために?禁じる?だがどんな権利を持っているというのだ?お前は二人に自分からは何を約束してあげられるというのだ、そうした権利を持つために?己の…

「罪と罰」26(1−4)

まあいい母さんは仕方ない、勝手にするがいいさ、ああなんだから、でもドゥーニャはどうしてだ?ドゥーネチカ、お前、俺はお前さんのことは分かっているぞ!お前はもう数え年で二十になっていたよな、最後に会った時は。お前さんの性格はすでに掴んでいたよ…

「罪と罰」25(1−4)

《ふむ、それは正しい、――彼は頭の中で渦巻いていた想念の後を追いながら続けた。――それは正しいさ。“人をよく知るためには徐々にそして慎重に”付き合う必要がある。だがルージン氏ははっきりしている。肝心なのは“実務的な人間で、善良らしい”という点だ。…

「罪と罰」24(1−4)

母の手紙は彼を散々に苦しめた。だが最重要の根本的な点については、ほんの一時も、まだ手紙を読んでいる最中においてさえ、彼の中で疑念は生じていなかった。何よりも重要な事の核心は彼の頭の中で決定されており、最終的な結論が下されていたのである。つ…

「罪と罰」23(1−3)

ねえ、掛け替えのない私のロージャ、私はね、ある理由から(だけどそれは決してピョートル・ペトローヴィチとは関係ないんだよ、ただ単に私自身のある個人的な、ひょっとすると老婆の、女のわがままからかもしれないんだけどね)もしも彼らの結婚後別々に暮…

「罪と罰」22(1−3)

それに彼は非常に計算高い人だから、当然、彼自身の夫婦の幸せが、ドゥーネチカが彼と結婚していることで幸せになればなるほど一層確かなものになる、ということに気付くでしょう。でも性格において何かしっくりこないこと、何らかの古い習慣、さらには考え…

「罪と罰」21(1−3)

要するに、可愛いロージャ、この手紙はあまりにも立派に感動的に書かれていたので、私は号泣する程でした。それを読みながらね。そして今に至るまで涙なしにそれを読むことはできません。その他にドゥーニャの無罪を証明するものとして、仕舞には女中の証言…

「罪と罰」20(1−3)

「可愛い私のロージャ――と母は書いていた――お前と手紙で話をしなくなってもう2ヶ月余りになりますね。そのことで私自身心を痛め、気になって眠れぬ夜さえありました。でもきっとお前はこの余儀ない無沙汰のことで私に腹を立てることはありませんね。お前は…

「罪と罰」19(1−3)

彼が目を覚ましたのは翌日のすでに遅く、不安な眠りの後であったが、睡眠は彼を元気づけなかった。目覚めた彼は怒りっぽくて、苛立ちやすく、悪意に満ちており、憎々しげに自分の小部屋を見た。それはちっぽけな物置で、6歩程の奥行があり、極めてみすぼら…

「罪と罰」18(1−2)

ラスコーリニコフはすぐにカテリーナ・イヴァーノヴナが分かった。それは恐ろしく痩せた女で、品が良く、背はかなり高くてスタイルが良かった。また髪は美しい濃い亜麻色で、頬は実際斑点が出る程真っ赤であった。彼女は胸の前で手を握り締め、小さい部屋の…