「罪と罰」24(1−4)

  母の手紙は彼を散々に苦しめた。だが最重要の根本的な点については、ほんの一時も、まだ手紙を読んでいる最中においてさえ、彼の中で疑念は生じていなかった。何よりも重要な事の核心は彼の頭の中で決定されており、最終的な結論が下されていたのである。つまり《こんな結婚は有り得ない、俺が生きているうちは、そしてルージン氏は消え失せろ!》である。

 《なぜなら事は明瞭だからだ、――彼は独り言をつぶやいたのだが、それはにやりと笑い自分の結論の正しさをあらかじめ毒々しく勝ち誇りながらであった。――だめだよ、母さん、だめだよ、ドゥーニャ、僕を騙すことはできない!・・それにしても俺の助言を求めずに勝手に事を決めてしまったことを謝ってくるとは!ふざけるな!今やもう破談にするのは不可能だと考えているが、今に分かるさ、できるかできないかさ!口実ってのが実に立派だよ。“それはもう非常に実務的な人間であるピョートル・ペトローヴィチは、それはとても実務的な人間だから、結婚することさえ駅馬車はおろか鉄道に乗りながらでないとできない”なんて言ってる。だめだよ、ドゥーネチカ、全てお見通しさ、お前が俺と何についてたくさん話すつもりでいるかなんて。それにお前が一晩中部屋の中を歩き回りながら何について考えていたか、母さんの寝室に置いてあるカザン聖母のイコンの前で何について祈っていたかも分かっている。ゴルゴダに登るのは苦しい。ふむ・・・。それでもう最終的に決定されたということか。実務的で理性的な人のところに嫁ぎに行きなさるか、アヴドーチヤ・ロマーノヴナ、自分の財産があり(すでに自分の財産がある、そりゃますます大したもんだ、胸に沁みるじゃないか)、二つの職に就いていて、現代の最も新しい世代の信念に共鳴している(母さんの書くところによればだが)、そして“善良、らしい”、ドゥーネチカ自身の指摘によれば。このらしいが何より傑作さ!そしてそのドゥーネチカ自身が他ならぬこのらしいに嫁ごうとしている!・・結構なことだ!大変結構なことだ!・・

 ・・・それはそうと興味深いのは、でも何のために母さんは“最も新しい世代”なんかについて俺への手紙で触れたんだろう。単に人物の性格づけのためなのか、あるいは今後を見据えてのことか、つまりルージン氏のために俺の機嫌を取っておくという。あーずるい連中だ!もうひとつの事も明らかにしておきたいもんだ。つまりどの程度まで彼ら二人はお互いの腹の内を見せ合っているのか、あの日のあの晩、そしてその後ずっと。すべての言葉が彼らの間で直接口に出されたのだろうか、それとも二人はお互いの心と考えは一致していると考えているから何でもかんでも口に出して言う必要はないし無駄に秘密を漏らすこともあるまい、ということになっていたのだろうか。おそらくそれは幾分かはそうだったのだ。手紙から明らかさ。つまり母さんには奴は乱暴だと思われたのだが、少し、であり、無邪気な母さんはそのちょっとした発言でドゥーニャをうんざりさせることになったのだ。あれは無論怒り、そして“忌々しげに答えた”。当然さ!激怒しない奴なんているか、事が明白で微妙な問題もなく、話す必要が全くないと決まっている場合ならさ。で、その人は俺に何と書いて寄越したか。“ドゥーニャを愛してね、ロージャ、あれは自分自身以上にお前を愛しています”。息子のために娘を犠牲にすることに同意したことで、密かに彼女自身を苦しめているのは良心の呵責ではないのか。“お前は私たちの希望、お前は私たちの全てです!”ああ母さん!・・》怒りが彼の中でどんどん込み上げてきた。もしも今ルージン氏と会ったなら、彼は多分殺してしまっただろう!