2012-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「罪と罰」16(1−2)

マルメラードフは話すのを止めると笑いそうになった。すると急にそのあごが跳ねるように動き出した。もっとも彼はこらえていたが。この居酒屋、堕落した様子、干草船での五日間それにウォッカの瓶、こうしたものと妻と家族に対する病的な愛情が一緒になって…

「罪と罰」15(1−2)

「それ以来、旦那様」しばしの沈黙の後彼は続けた。「それ以来、ある不都合な出来事をきっかけにまた悪意ある人々による密告のために、――これはダリヤ・フランツェーヴナがけしかけたのですが、どうやらそれは彼女に対してしかるべき敬意を欠いたためのよう…

島崎藤村 「新生」1

芥川龍之介は「或阿呆の一生」の中で「新生の主人公ほど老獪な偽善者に出会ったことはなかった。」と述べているが、いったいこれはどういうことを意味しているのだろうか。 「新生」は藤村の実生活において実際に起きた姪との恋愛事件を赤裸々に綴った小説と…