2020-01-01から1年間の記事一覧

「罪と罰」76(2-5)

「何事にも限度というものがあります。」見下すような調子でルージンは続けた。「経済思想はまだ殺人を認めるような方向にはなっていません。それにちょっと推測してみれば・・・」 「ところで本当なんですか」突然またラスコーリニコフが敵意のため震える声…

「罪と罰」75(2-5)

「すみません、僕も明敏じゃありませんので」ラズミーヒンが急に口を挟んだ。「ですから止めましょう。僕は目的があって話し始めたんです。ところが実際は自己満足の駄弁につぐ駄弁、静まることも途切れることもない分かり切ったことの数々、全く同じ事の繰…

「罪と罰」74(2-5)

「言わずもがな私は十分な情報を集めることはできませんでした。自身が不案内なので。」ピョートル・ペトローヴィチは慎重に反論した。「ですが二つの大変こざっぱりした小部屋でして、まあこれも非常に短い期間ですから・・・すでに真の、つまり未来の我々…

「罪と罰」73(2-5)

ピョートル・ペトローヴィチは間違いなく腹を立てていたが口を閉ざした。彼はこれらのことすべてが何を意味しているかなるべく早く理解しようと全力を挙げていた。1分ばかり沈黙が続いた。 その間、返答した際わずかに彼の方に身を向きかけていたラスコーリ…