2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

島崎藤村 「破戒」3

丑松は告白し新たな人生を切り開いた。猜疑心に満たされていた彼の心は急に晴れ渡った。ひょっとしたら丑松は告白したことにより内面的な変化を経験したのかもしれない。「人間は境遇により、あるいは修養により、次第に変化するには違いないが、根本的な烈…

「罪と罰」14(1−2)

今度はあなたにお尋ねします。旦那様。私の方からプライベートな質問をさせて下さい。貧乏だけれど真面目な娘がまともに働いて沢山稼げると思いますか?・・1日で15コペイカになりませんよ、旦那様。仮にまじめであったとしても特別な才能でもなければ。…

「罪と罰」13(1−2)

「お若い方」再び頭を上げながら彼は続けた。「あなたの顔に私はある種の悲しみのようなものを読んだのです。入って来るなりそれがぴんときたので直ぐあなたに話しかけました。と申しますのは、あなたに身の上話をすることでこのお祭り好きな連中の前で自分…

島崎藤村 「破戒」2

「破戒」のクライマックスは、何と言っても丑松が生徒たちの前で穢多であることを告白する場面であるが、彼はなぜ父の「戒」を破って告白する道を選んだのであろうか。 小説を一読した印象からすると、猪子蓮太郎の死がその要因である。この死をきっかけに丑…