2012-05-01から1ヶ月間の記事一覧

「罪と罰」7(1−1)

少し経つとドアにごく僅かな隙間ができた。住人は不信感をあらわにして隙間から来訪者をじろじろ見ていた。暗闇の中から光を放つ小さな目が見えているだけだった。フロアに多くの人がいるのを見て取ると、勇気付き全て開放した。青年は敷居をまたいで暗い玄…

「罪と罰」6(1−1)

彼が歩かねばならなかったのは少しだけだった。彼は自分のアパートの門から何歩なのか知ってさえいて、それはきっちり730歩であった。ある時彼はそれを数えたのだが、その時にはすでに空想にどっぷり浸かっていた。当時彼は自分でもまだこの己の空想を信…