2022-01-01から1年間の記事一覧

「罪と罰」87(2-7)

カテリーナ・イヴァーノヴナは、例のごとく、空いた時間ができるとすぐ小さな部屋の中を行きつ戻りつすることに取り掛かっていた。窓からペチカまで行っては戻り、手をぎゅっと胸の前で組み、独り言ち、咳き込みながら。最近彼女はますますしげく長い時間自…

「罪と罰」86(2-7)

通りの真ん中に止まっていたのは、威勢のいい灰色の馬2頭がつけられた洒落た地主貴族の幌馬車であった。乗っている者はおらず、御者自身も御者台から降りて脇に立っており、馬は馬勒で抑えられていた。辺りは人がひしめき合っており、人だかりの前方には警…

「罪と罰」85(2-6)

「このペテルブルグに一体何が無いって言うんすか!」熱っぽく若い方が叫んだ。「父ちゃん母ちゃんをのぞきゃ何だってありますよ!」 「それ除きゃ、おめえよ、何でもあるわな。」教え諭すような態度で年配の方が同意した。 ラスコーリニコフは立ち上がって…

「罪と罰」84(2-6)

「ぐでんぐでんに酔っ払ってたんです。助けてください。ぐでんぐでんに。」先と同じ女の泣き叫ぶ声が早くもアフロシーニユシカの近くから聞こえていた。「ついこの間も首をくくろうとして、縄から下ろされたんです。今しがた私は店に出かけてて、娘っ子を見…

「罪と罰」83(2-6)

「いや」 「馬鹿を言え!」もどかしそうにラズミーヒンが大声を上げた。「お前に何が分かる?お前は自分に責任が持てないだろうが!それにお前はこのことについて何も分かっちゃいない・・・俺は何度となく全く同じように、人とけんか別れしてはまた歩み寄る…