2017-01-01から1年間の記事一覧

「罪と罰」61(2−3)

「今日はさ、パーシェンカにいちごのジャムを届けてもらわないとな、彼に飲み物を作ってやらなきゃ。」そう言うとラズミーヒンは自分の席に着いて、またスープとビールに取り掛かった。 「でも彼女はどこでいちごなんか手に入れるの?」ナスターシャは尋ねた…

「罪と罰」60(2−3)

ラスコーリニコフはびくびくしながら緊張して周囲の観察を続けていた。その間にラズミーヒンは彼の近くのソファに席を移し、熊みたいに不器用なやり方で彼の頭を左手で抱えると、自分で起き上がることができたかもしれないのにも関わらずだ、右手でスープの…

「罪と罰」59(2−3)

しかし彼は病んでいる間ずっと完全に意識を失っていたというよりは、熱に浮かされて半分意識がない状態であった。後に彼は多くのことを思い出した。ある時は彼の近くに多くの人々が集まって来て彼をどこかへ連れ出そうと、彼のことで大変な議論、言い争いに…

「罪と罰」58(2−2)

彼は20コペイカを片手に握り締め10歩ほど歩くとネヴァ川の方、宮殿の方に顔を向けた。空には極小さな雲っこ一つなく、水はほぼ淡青色だった。こんなことはネヴァ川ではめったにない。大寺院の円屋根が、それはこの場所から、小礼拝堂まであと20歩ほど…

「罪と罰」57(2−2)

「じゃあ!」彼は突然言うとドアの方に歩き出した。 「待てよ、待てったら、この変わり者!」 「止めろ!・・」再びそう言った彼はまた腕を振り払おうとした。 「じゃあ何のために来やがったんだ、今さら!気でも触れたか?だってこれじゃ・・・ほとんど侮辱…

「罪と罰」56(2−2)

確かにそれはその通り、全くその通りだった。とは言え彼はそのことを以前にも知っていたので、決してそれは彼にとって新しい疑問というわけではなかった。夜、水の中に捨てることが決まった時、どんなためらいや反論も無かった。それどころか、それはそうで…