「罪と罰」23(1−3)

ねえ、掛け替えのない私のロージャ、私はね、ある理由から(だけどそれは決してピョートル・ペトローヴィチとは関係ないんだよ、ただ単に私自身のある個人的な、ひょっとすると老婆の、女のわがままからかもしれないんだけどね)もしも彼らの結婚後別々に暮らしたなら、今もそうであるように彼らと一緒にではなくね、その方がもしかするとより良い振る舞いということになるんじゃないかと思えるんです。彼は高潔で礼儀正しいでしょうから、自ら私を招きこれ以上娘と離れ離れにならないよう勧めるのはまず間違いないと思います。仮に今のところ口にしていないにせよ、それは論を俟ちません。言葉はなくともそんなふうに予想されるんですもの。でも私は断るつもりです。私は人生において何度も感じてきました、姑が夫の心に叶うことはそうそうないということを。そして私はどんな人に対してもほんのわずかな重荷にもなりたくないだけでなく、自分自身が十分自由でいたいのです。自分の食い扶持がなんとかあって、お前やドゥーニャのような子どもたちがいるうちはね。もしも可能なら、お前たち二人の近くに住むつもりです。なぜってロージャ、一番いいことだから手紙の最後に取って置いたんだよ――聞いておくれ、可愛いお前や、もしかすると、もうすぐまたみんなで一緒に集まって、ほぼ3年に及ぶ離れ離れの生活に終わりを告げ、3人一緒に抱き合えそうなんだよ!すでに確実に決まっているのは私とドゥーニャがペテルブルクに行くということで、それがいったいいつになるのかは分かりませんが、でもいずれにせよもう本当にすぐで、ことによると一週間後なんてことも。すべてはピョートル・ペトローヴィチの指示にかかっていて、彼がペテルブルクで状況を見極め次第、直ぐ私たちに知らせることになっているんです。ある打算から彼はできるだけ早く結婚式を済ましてしまいたいんだけど、もし可能であればちょうど今の肉食期に挙げてしまいたいとさえ考えているんですよ。でもうまく運ばなかったなら、期間が短いせいでね、その場合には断食期の後すぐにと考えているんです。ああ、私はなんという幸せと共にお前をこの胸に抱きしめるんでしょう!ドゥーニャはお前と会える喜びですっかり興奮して、一度なんかは冗談でこのことだけのためにだってピョートル・ペトローヴィチと結婚すると言いました。あれは天使だよ!彼女の方からは今回お前に何も書き足していません。ただ私にこう書くように言いました。お前とたくさん話さなければならない、それはあまりにもたくさんだから今回はとてもペンを取る気になれない、なぜなら数行じゃ何も書けないものだし、ただ自分をがっかりさせることになるだけだから、と。またお前をより強く抱きしめ、数え切れないキスを送る、と書くようにとも。そのことはさておき、ことによると私たちはもうすぐ直接会うことになるんだけど、それでもやはり近いうちにお前にお金を送りますね、できるだけたくさんね。今やドゥーネチカがピョートル・ペトローヴィチに嫁ぐことはみなの知るところとなったので、私の信用も急に上がりました。で、私が確かに把握しているのは、アファーナシー・イヴァーノヴィチが今では私に年金を担保に75ルーブルまでも貸せるということです。だからお前に、もしかすると25あるいは30ルーブルだって送れるかもしれません。本当はもっと送ってあげたいところだけど、旅費が心配なんです。ピョートル・ペトローヴィチがとても親切なので首都に出る費用の一部を持ってくれるんだけど、つまり私たちの積荷と大きな長持ちを自分の金で送り届ける(彼の知人らを介してなんとかするようですが)のを自ら買って出てくれたんです。でもやっぱりペテルブルクに到着した後のことも計算に入れておかなければ。そっちじゃ少しくらいお金がなくちゃ人前に出られないでしょ。せめて最初の分だけでもね。とは言うものの私はドゥーネチカと一緒にもう細かいところまで全部計算し、旅は僅かで済むことが分かりました。家から鉄道までは全部で90露里、でもう念のため知り合いの百姓の御者一人と話をつけてしまいましたよ。そしてそこで私はドゥーネチカと一緒に三等に乗り、あっという間に無事到着というわけです。だからね、もしかするとお前に25じゃなくて、きっと30ルーブル送れると思います。さあ十分でしょう。2枚の便箋をすっかり埋めてしまったもの。それにもう書く場所が残っていないし。私たちの話はこれで全部です。それにしてもなんて多くの出来事があったんでしょう!さて、掛け替えのない私のロージャ、もうすぐ会う日までお前を抱きしめています。そしてお前に母の祝福を与えましょう。ドゥーニャを愛してね、自分の妹を、ロージャ。愛してね、彼女がお前を愛するように。そして覚えておいてね、彼女がお前を限りなく、自分自身よりも愛していることを。あれは天使です。でお前は、ロージャ、お前は私たちの全て――私たちのあらゆる希望、期待の全てなんだよ。お前が幸せでありさえすれば、私たちも幸せになるでしょう。神様に祈ってますか、ロージャ、以前のように、また神の、我らの救世主の慈悲を信じていますか。心底心配なのは、お前が最近流行りの無信仰にやられてしまっていないかということです。もしもそうならお前のために祈りましょう。思い出しなさい、可愛いお前や、お前がまだ子供の頃、父さんが生きていた時、私の膝の上で祈りの言葉をつぶやいていたことを、そして私たちみんながその頃幸せだったことを!さようなら、というよりもまた会う日まで、だね。きつくお前を抱きしめ、数え切れないキスを添えます。

 死が分かつまでお前の

 プリヘーリヤ・ラスコーリニコヴァ」


 ラスコーリニコフが読んでいる間ほぼずっと、手紙の最初から、彼の顔は涙で濡れていた。だが読み終えた時には、それは青ざめ痙攣で歪んでおり、重苦しくて気難しい、意地の悪い笑みがその唇をよぎった。彼はぺちゃんこの使い古した枕に頭を預けて横になり考えていた。長いこと考えていた。その心臓は強く脈打ち、その思考は激しく動揺していた。とうとう彼はこの黄色い、タンスあるいは長持ちに似た小部屋にいるのが蒸し暑くて息苦しくなってきた。視線と思考はひろびろとした空間を求めていた。彼は帽子を掴むと外に出た。今回はもう誰かに階段で会うことを警戒していなかった。そのことについて忘れていたのだ。進路はV通りからワシーリエフスキー島の方に向かう道に取ったのだが、そこへはまるで用事で急いでいるといった具合であった。しかし例によってその歩みは道を道と認識せず、小声でぶつぶつ言いながら、しかも声に出して自問自答しながらであり、通行人をひどく驚かしていた。多くの人は彼を酔っ払いだと勘違いした。