「罪と罰」22(1−3)

それに彼は非常に計算高い人だから、当然、彼自身の夫婦の幸せが、ドゥーネチカが彼と結婚していることで幸せになればなるほど一層確かなものになる、ということに気付くでしょう。でも性格において何かしっくりこないこと、何らかの古い習慣、さらには考え方において何かしらの不一致があったりした場合(そういったことはどんなに幸せな結婚生活においても避けることはできませんけどね)、この点についてはドゥーネチカ自身が私に言いました。自分を信頼している、そういった場合は心配無用で、自分は多くの事に耐えることができる、今後の関係が誠実で公平であればだけどね、と。一例を挙げると私にも彼が最初乱暴かなと思われることがありました。でもそんなことが起こり得るのは、彼が率直な人間だからこそでしょ、きっとそうです。例えば二回目の訪問の時、すでに同意を得た後のことだけど、話の中で、彼はもう前から、ドゥーニャを知る前に、誠実だけれども持参金のない娘、そして是非とも貧乏を経験している娘をもらうことに決めていた、と言いました。なぜなら、彼の説明によればですよ、夫は何によっても妻に恩義を感じているようではいけない、むしろ妻が夫を恩人のように考えているのであればその方がはるかにいい、だからだそうです。言っておくけど、彼は私が書いたよりももうちょっと柔らかく、優しく言いました。と言うのも私が実際の表現を忘れてしまって、覚えているのは彼の考えだけだからです。また彼がこのことを言ったのは決して意図的にではなく、明らかに口を滑らしてです。会話の真っ最中にね。だから後になって修正して和らげようと必死になってさえいましたよ。でも私にはそれでもやはりこれはちょっと乱暴かなと思われました。そこで後からドゥーニャに伝えました。けれどもドゥーニャは忌々しげな様子さえ見せて答えましたよ。“言うのとやるのは違う”、と。これはまさにその通りですね。決心する前ドゥーネチカは一晩中眠りませんでした。私がもう眠っているものだと思ってベッドから起き上がり、一晩中部屋の中を行ったり来たりしていました。最後には膝立ちになって長いこと熱心にイコンの前で祈っていました。そして翌朝決心したことを私に告げたのです。

 ピョートル・ペトローヴィチが今回ペテルブルクに行くことについてはすでに触れましたね。彼はそちらに多くの仕事を持っていて、ペテルブルクに公共の弁護士事務所を開きたいと思っているんです。もうかなり前から様々な訴訟、特に民事訴訟に携わっていて、近頃ある重大な民事訴訟に勝訴したばかりなんですよ。ペテルブルク行きが避けられないのはそっちで元老院でのある重大な案件を抱えているからなんです。だからね、可愛いロージャ、彼はお前にとってもすごく有益であるかもしれないじゃない。何にせよね。で私とドゥーニャはもう想像してしまいましたよ。お前がもう今日にでも未来の栄達に向けスタートを切り、自分の運命がはっきり定まったと確かに考えることができるかのようにね。ああ、もしもそれが実現したなら!それはもう大変なご利益だから、私たちに対する正真正銘の神の恩恵に他ならないと考えるべきでしょうね。ドゥーニャはこのことについて空想ばかりしています。私たちはもうこのことについて思い切ってピョートル・ペトローヴィチに少し話してみました。彼は慎重な物言いで言いましたよ。もちろん秘書なしで済ますことはできないから、無論他人よりも親類に給料を払った方がいい、ただし当人が職務に有用であればの話だが(お前が有能でないなんてこと!)。でもすぐに疑問を呈しました。大学の課業は事務所で働く時間をお前に残してはおかないのではないか、と。今回はそんなことで終わりました。でもドゥーニャはこのこと以外については今や何も考えていません。彼女は今やすでに数日間に亘ってすっかりある種の興奮状態にあり、あることについての全計画を練り上げたんです。それはお前が後にピョートル・ペトローヴィチの民事訴訟の同僚、さらにはパートナーになるかもしれないことについてです。お前が法学部なだけになおさらだよね。私はね、ロージャ、彼女に大賛成でその計画と希望のすべてを共有しているんですよ。間違いなくそれは実現するだろうと考えてね。そして今回のピョートル・ペトローヴィチ(だって彼はお前をまだ知らないんだもの)の十分納得できる逃げ口上にも関わらず、ドゥーニャは自分の良い影響を未来の夫に与えることによって全てが得られると固く信じています。このことについて確信してしまっているんです。もちろんピョートル・ペトローヴィチにこの将来の空想に関することはどんなことも喋らないようにしていますよ。特にお前が彼のパートナーになることについてはね。彼は実際的な人間だから、ひょっとしたら非常に冷淡に受け止めるかもしれません。こんなことはみな単なる空想に過ぎないと彼には思われるかもしれませんから。また私もドゥーニャもまだ自分たちの確かな希望、つまりお前が大学にいるうちは仕送りするのを助けてくれること、について彼と全く話していません。なぜ話さないかと言えば、第一にそれは後に自然になされるだろうからです。彼は恐らく余計なことは言わずに自分の方から提案するでしょう(こんなことでドゥーネチカに断るなんてことが)。それは他ならぬお前が事務所で彼の右腕となり、この助力を援助という形式ではなく、お前が稼いだ給料という形で受け取れるようになることで一層早まるんじゃないですか。そんな風に持っていきたいのです、ドゥーネチカは。そして私も彼女に大賛成です。二番目に話さない訳は、目前に迫った今度の対面において、私はお前を彼と対等な立場に立たせたいと特別に希望しているからなんです。ドゥーニャがお前のことを有頂天になって彼に話した時、彼は答えました。どんな人間であっても最初は自分自身で、より近いところから見なければならない、その人について判断するには。そして知り合いになる過程で、お前に関する自分の意見を好きなように作りあげる、と言いました。