「罪と罰」21(1−3)

要するに、可愛いロージャ、この手紙はあまりにも立派に感動的に書かれていたので、私は号泣する程でした。それを読みながらね。そして今に至るまで涙なしにそれを読むことはできません。その他にドゥーニャの無罪を証明するものとして、仕舞には女中の証言も出てきました。彼らはスヴィドリガイロフ氏自身が予想していたよりもはるかに多くのことを見て知っていたのです。こうしたことはいつだってそんなものですけどね。マルファ・ペトローヴナはすっかり気が動転し、“再び打ちのめされた”わけです。本人が私たちに打ち明けたところによるとですよ。ですがそれ故にドゥーネチカの無罪を十分確信しました。ですぐその翌日の日曜日、真っ直ぐ教会にやって来て、膝立ちで涙を流しながら、この新たな試練に耐え自分の為すべきことを果たす力を授けてくれるようマリヤ様に祈りました。その後教会から真っ直ぐ、誰のところに寄ることもなく、私たちのところへやって来てすべてを話しました。さめざめと泣いていました。それから後悔の念に浸りながらドゥーニャを抱きしめ、許しを請うたのです。すぐその朝、少しも長居することなく、真っ直ぐ私たちのところから町のありとあらゆる家に向けて出かけて行きました。そして行く先々で、ドゥーネチカの誇りを最高に満足させる表現でもって、涙を流しながら、彼女の潔白それからその感情と行いの高潔さを回復させました。その他に、全員にドゥーネチカがスヴィドリガイロフ氏に宛てた自筆の手紙を見せ、かつ声に出して読み、それを書き写すことさえさせました(こんなことは全く余計なことだったと私には思われますけどね)。こんなやり方で彼女は数日間に亘って、町の家々を片っ端から回らなければならなくなりました。ある人々が選り好みしてると言って怒り出したせいです。こんな風にして順番が出来上がると、各家々ではもうあらかじめ待機し、いついつにマルファ・ペトローヴナがどこそこで例の手紙を読むということが知れ渡っているという事態になりました。そして読むたびにああした連中、つまり手紙をすでに何回か、自分のところでも、他の知り合いのところでも交替で聞いている人々までもが集まってくるのです。私の考えでは、多くのことが、非常に多くのことがこの場合余計なことだったと思います。でもマルファ・ペトローヴナは何と言ってもああいう性格ですからね。少なくとも彼女はドゥーネチカの名誉を十分回復させてくれましたよ。そしてこの事件の醜悪さのすべては拭い難い恥辱としてその夫にのしかかりました。主犯者ということでね。彼が可哀想に思われるくらいです。それはもうあまりにも厳しい態度がこの血迷った男に対して取られました。ドゥーニャはすぐにも数件の家で家庭教師を頼まれるようになりましたが、彼女は辞退しました。総じてみなが彼女に対し急に特別な尊敬を持って接するようになったのです。こうした諸々のこと全てが例の思いがけないチャンスの主たる原因にもなったのです。それによって今や変わってきているのです、強いて言うならば私たちの全運命が。聞いておくれ、可愛いロージャ、ドゥーニャに求婚者が現れました。そして彼女はすでに同意を済ませたのです。他ならぬこのことについて一刻も早くお前に知らせておきます。お前の同意もなく事は成ってしまいましたが、きっとお前は私に対しても妹に対しても不満を持つようなことにはならないでしょう。なぜなら、お前の返事が届くまで待って先延ばしにするのは不可能だっただろうということが、お前なら事の成り行きからして分かってくれるだろうから。それにお前だって手紙ですべてを正確に判断することはできないだろうし。とにかくそんなことになりました。彼はすでに7等文官で、ピョートル・ペトローヴィチ・ルージンといい、マルファ・ペトローヴナの遠い親戚です。彼女は今回の件で大分力になってくれました。彼女を通じて私たちと近づきになりたいと表明するところから始めると、然るべく迎えられ、コーヒーを飲み、もうそのすぐ翌日には手紙を送り、その中で大変礼儀に適ったやり方で結婚を申し込み、速やかで確たる返事を求めたのです。彼は実務家で忙しく、今回はペテルブルグに急いでいます。だから1分1秒が惜しいのです。言うまでもなく私たちは最初とてもびっくりしました。こうしたこと全てがあまりにも急に不意に起こったんですから。一緒になってあれこれ考えいろいろ悩みましたよ、その日はずっとね。彼は前途有望な生活に心配のない人で、二つの職に就いていて、もう自分の財産を持っています。実際にはすでに45才なんですが、相当感じのいい外見をしていて女性にも好かれそうです。それに大体から言えば、とても堂々とした礼儀正しい人です。ただちょっと無愛想で横柄に思われるようなところも。でもそれは多分初めて会うからそんな風に思えただけしょう。それから前もって言っておきますけど、可愛いロージャ、ペテルブルクで彼と会ったら、それはもうすぐにも実現するんだけど、あんまり性急に、熱烈に判断しないでおくれよ。お前がよくやるようにね。仮に一見して彼に気に入らないところがあったとしてもだよ。このことは万一に備え一応言っておきます。もっとも彼がお前にいい印象を与えることは間違いないと信じてはいますけどね。その他に例えそれがどんな人であろうともちゃんと知るためには、その相手とは徐々にそして慎重に付き合う必要があります。誤解と偏見に陥らないようにするためにです。後からそれを訂正して和らげるのはとても難しいですからね。まあでもピョートル・ペトローヴィチは少なくともいろいろな特徴からして非常に立派な人物ですよ。一番初めの訪問で彼は私たちに、自分は実際的な人間だが、多くの点で、彼自身の言葉によると、“現代の最も新しい世代の信念”に共鳴しており、あらゆる偏見の敵対者である、と宣言しました。多くのことをその他にもしゃべっていましたが、それはやや見栄っ張りらしく、話を聞いてもらうのがとても好きだからです。でもこんなことは欠点とは言えませんね。私は言うまでもなくあまりよく分かりませんでした。でもドゥーニャが私に説明してくれましたよ。彼はあまり教養はないけど、賢くていい人だろうって。お前は妹の性格を知ってるでしょ、ロージャ。しっかりしていて分別があり、我慢強くて寛大な心を持った娘です。まあ激しやすいハートも持っているんだけど。そんな風に私はあの娘を把握しています。もちろん彼女にも彼の方にも特別な愛情はこの場合ありません。でもドゥーニャは賢い娘であるばかりでなく、――それと同時に天使のように高貴な存在でもあるでしょ。夫の幸せを自分の義務とみなすしょう。でその夫は今度はこちらからと彼女の幸せを気遣ってくれるようになるんじゃないでしょうか。でも私たちは今のところそれを疑うような理由を多く抱えているわけではないのです。確かに事が性急になされことは認めますけどね。