「罪と罰」50(2−1)

 「騒ぎに喧嘩だなんてうちじゃ一切なかたでしたよ、カプテン様」突然彼女は早口でべらべらやり出した。それはあたかもエンドウ豆をこぼしてしまったかのようで、強いドイツ訛りがあったが、威勢のいいロシア語であった。「それにどんな、どんなシュキャンダルだって、あの人たちは酔っ払って来たです、このこと私みんな話す、カプテン様、私は悪くないです・・・私のところは上品なうちです、カプテン様、それに上品な対応です、カプテン様、それに私自身は常に、いつだってどんなシュキャンダルものぞでないです。なのにあの人たちは酔っ払ってすっかり来た、その後さらに3ぴんたのました。それから一人が足を上げてがた足でピアノを弾き始めた。これは全く結構なことじゃない上品なうちへは。で彼はピアノをぶち壊した、全く全くそこにはマナーがない、と私は言た。ですが彼はぴんを掴むとそれでみなを後ろから突き出したです。この時点で私がすぐ庭師を呼び始めると、カールが来た。彼はカールをつかまえると目を殴た。そしてゲンリエートの目も殴た。で私には5回びんたくれた。これは上品な家へあまりに不作法です、カプテン様。それで私は叫んだ。ですが彼は運河に面した窓を開け、まるで小さな豚のようにビービー叫び出した。これは恥ずかしいです。どうしてこんなことができるのか、窓から通りに向かってまるで小さな豚のようにビービー叫んだです。これは恥ずかしいです。やれやれやれ!それでカールが後ろから彼の燕尾服を掴んで窓から引きずり下ろした、その場で、これは本当のことです、カプテン様、彼のコートをずたずたに破た。すると彼は叫んだです。罰金として15ルーブル彼に払わなければならない、と。で私自身は、カプテン様、彼にコートの5ルーブルを払たです。でこのひとは上品じゃない客です、カプテン様、でありとあらゆるシュキャンダルを引き起こしたです!彼は言ったです、俺はお前さんを風刺して載せてやる、なぜなら俺はあらゆる新聞でお前さんのことについて何でも書くことができるだから。」

 「物書き、ということか?」

 「そうです、カプテン様、なんてこの人は上品じゃない客なんでしょう、カプテン様、上品なうちへ・・・」

 「やれやれ!沢山だ!俺はすでにお前に言った、言ったぞ、俺はお前にすでに言ったじゃないか・・・」

 「イリヤ・ペトローヴィチ!」再び文書係りが言外に匂わせて言った。中尉が素早く彼の方に視線をやると、文書係りは軽く頭を下げた。

 「・・・それじゃほらお前に、最も尊敬に値するラビーザ・イヴァーノヴナ、俺の最後のお話を聞かせてやる、もうこれが最後だぞ」中尉は話を続けた。「もしもお前の上品なうちでただの一度でもまたスキャンダルが起きたら、その場合には俺はお前をしょっぴくからな、格調高く言うところの。分かったか?それじゃ文学者、物書きが5ルーブルを“上品なうち”で燕尾代として受け取ったのか?全く奴ら、物書きときたら!」そして彼はラスコーリニコフの方に侮蔑の視線を投げた。「おとといある居酒屋でも事件があった。食事はしたのに金を払いたくないときたもんだ。そいつが言うことには、“そうくるなら私はあなたのことを諷刺して書きますから”だと。船ではまた別の奴が、先週のことだ、尊敬されるべき5等文官の御家族、奥様と娘さんを卑劣極まりない名で呼んだのだ。ついこの間は菓子屋である者が突き出されて追い出されたし。連中なんてこんなもんさ、物書き、文学者、学生、布令役なんて・・・くそっ!お前はもう行け!俺が自らお前のところに顔を出してやる・・・その時は気を付けるんだぞ!分かったか?」

 ルイーザ・イヴァーノヴナは愛想よくせかせかと四方にお辞儀をし始めた。そしてお辞儀をしながらドアまで後退していった。ところがドアのところでお尻が一人の恰幅のいい将校とぶつかった。含みのない、いきいきとしたその人の顔には、これでもかというほど密生した見事な金色の頬ひげが生えていた。この人物こそニコヂーム・フォミーチ、区警察署長であった。ルイーザ・イヴァーノヴナは急いで床に着こうかというほど深く屈んでお辞儀をすると、足をちょこちょこ小刻みに動かし、スキップしながら役所から飛び出て行った。