「罪と罰」66(2−4)

 ゾーシモフは背の高い肥満した男で、その顔はむくみ、精彩を欠いて青白く、髭はつるりと剃り上げられ、髪は白くてストレート、眼鏡をかけており、脂肪でふくれた指には大きな金の指輪がはまっていた。年齢は27歳くらい、ゆったりとした粋な軽いコートに淡色の夏用ズボンをはいており、総じて彼が身に付けているものはみなゆったりしていて、おしゃれで新しいものだった。下着は申し分のないものだし、時計の鎖はどっしりしていた。その物腰は緩慢であたかも生気を欠くという感じであったが、それと同時に習得された馴れ馴れしさがあった。自惚れは努めて隠されていたが、ちょいちょい尻尾を出していた。彼を知っている者はみな彼を重苦しい男と見なしていたが、その道のプロだと言っていた。

「ゾーシモフ、お前ん所には2回立ち寄っ・・・ほら、意識を取り戻したぞ!」ラズミーヒンが大声で言った。

「分かった、分かった。さてそんで今調子はどうなんだい、え?」そうラスコーリニコフに話しかけたゾーシモフは、じっと彼を見つめつつ、彼のいるソファーの方へ、ソファーの足元辺りに腰を下ろすと、すぐさま場所が許す限りゆったりと手足を伸ばした。

「いやもうずっとふさぎ込んでるよ。」ラズミーヒンが続けた。「リネンをついさっき取り換えてやったところでさ、あやうく泣き出すところだったんだぞ。」

「全然おかしいことじゃないさ。リネンは後だって構わんよ、本人が望んでいないのであれば・・・。脈は大変結構。頭がまだ少し痛いんじゃないか、え?」

「僕は健康さ、健康そのものだって!」突然ソファーの上で少し上体を起こし眼をぎらつかせるとラスコーリニコフはいらついて頑固に言い放った。だがすぐまた枕に身を横たえると壁の方を向いてしまった。ゾーシモフは彼をじっと観察していた。

「非常に結構だ・・・すべて順調だ。」物憂げに彼は言った。「何か食べたかい?」

 話を聞くと、彼は何を与えていいか問われた。

「何だって与えて構わんよ・・・スープ、お茶・・・きのこときゅうりはもちろん駄目だな。牛肉も必要ないだろ、それから・・・あれこれ言う必要もないだろ!・・」彼はラズミーヒンと見交わした。「水薬はいらないし、他も何もいらない。明日俺が様子を見るとしよう・・・今日の方がいいか・・・まあそうだな・・・」

 「明日の夕方は俺が散歩に連れてくよ。」決然としてラズミーヒンが言った。「ユスポフ庭園に行って、その後は“パレ・ド・クリスタル”に寄ってみよう。」

「俺だったら明日は彼には指一本触れないんだがな、でもまあ・・・少しなら・・・まあその時になってみれば分かるさ。」

「そりゃ残念だな、今日ちょうど引っ越し祝いをやるんだ。ここからすぐのところで。ぜひ彼もと思っていたんだが。ソファの上でちょっと横になっているだけでいいんだけどな。君は来るんだろ?」ラズミーヒンが突然ゾーシモフに話しかけた。「忘れんなよ。約束してたろ。」

「ひょっとしたら、少し遅れて行くかもしれん。何やるつもりなんだい?」

「全然大したことないよ。お茶にウォッカにニシン。それにパイが出るくらいなもんさ。内輪の集まりさ。」

「誰と誰?」

「みなこの辺に住んでる連中で、ほとんどみんな新顔なんだ。実際のところはさ。おそらく年配のおじさんを別にして。彼も新顔ではあるんだけどね。きのうペテルブルクに来たばかりなんだ。あるちょっとした用事でさ。5年に1回くらいのペースで会ってるな。」

「どういう人なんだい?」

「田舎の郵便局長としてつまらない一生を過ごした人さ・・・なけなしの年金をもらってて、65歳で、話すほどのこともない・・・でも僕は彼が好きだよ。ポルフィーリー・ペトローヴィチが来るぞ。ここの予審判事で・・・法学者の。君は知ってるんだろ・・・。」