「罪と罰」82(2-6)

 彼は外に出た。ある激しいヒステリックな刺激のため全身が震えていた。そこにはしかし耐え難い愉悦の一部が存在していた。――とはいえ気分は沈み、恐ろしく疲れていた。その顏は歪み、何かしらの発作の後のようであった。疲労が加速度的に増していった。力が生まれ、今突然最初の衝動すなわち最初のひりひりするような感覚を伴って彼の元にやって来た。そしてそれは感覚が弱まるにつれ、同じように急速に弱まっていた。

 

 一人残っていたザメートフは、さらに長い間同じ場所に居座り物思いに耽っていた。ラスコーリニコフは心ならずも、ある点に関する彼の全考えを一変させ、最終的にその意見を定めてしまった。

 

 “イリヤ・ペトローヴィチは木偶の坊だ!”――彼はそう結論を下した。

 

 ラスコーリニコフが通りに出るドアを開けるやいなや、突然、ちょうどポーチのところで、入って来たラズミーヒンと鉢合わせた。二人はあと一歩の距離だというのにお互いを見ていなかったので、危うく頭がぶつかりそうになった。しばらく彼らはお互いに相手の様子をうかがっていた。ラズミーヒンはこれ以上ないほどに驚いていたが、突然怒りが、本物の怒りが彼の目の奥でめらめらと燃え始めた。

 

 「お前こんなとこにいたのかよ!」彼はあらん限りの声で叫んだ。「寝床から抜け出して!俺はソファの下まで探したんだぞ!屋根裏部屋にだって上がったし!ナスターシャをお前のせいであやうくひっぱたくところだったんだからな・・・で当人はほれこんなところにいるときた!ローチカ!これはどういうことだ!洗いざらい本当のことを話せ!白状しろよ!聞いてんのか?」

 

 「それはあんたたち全員が僕には死ぬほど耐え難くなったということで、僕は一人になりたいのさ。」ラスコーリニコフは落ち着き払ってそう答えた。

 

 「一人だと?まだ歩くこともできない、まだ面が真っ青、しかも息苦しそうにしてるって時にか!あほか!・・“クリスタル宮殿”で何してたんだ?すぐ白状しろ!」

 

 「放っておいてくれ!」ラスコーリニコフはそう言って脇を抜けようとした。これでラズミーヒンは完全に切れた。彼はラスコーリニコフの肩を強く掴んだ。

 

 「放っておけだと?よくも“放っておけ”だなんて言えるな?お前本当に分かっているのか、俺が今お前をどうしようとしているのか?とっつかまえて、ふんじばって、脇に抱えて家に帰って、鍵かけて閉じ込めておくのよ!」

 

 「聞けよ、ラズミーヒン」ラスコーリニコフは静かに、そして見たところ落ち着き払った様子で話し始めた。「俺がお前のお助けなんて望んでいないのが、本当に見て分かんないのか?何もすき好んでこんな奴に目をかけてやることもないだろ・・・こうしたことに唾を吐きかけるような奴にさ?しかもこういうことがひどく負担になっている奴に?いったい何のためにお前は俺を病気の初期の段階で探し出したんだ?俺はもしかすると大層喜んで死んでたかもしれないんだぜ?お前は俺を苦しめている、お前にはもう・・・うんざりだ、と今日言ったのじゃ不十分なのかよ!実は人を苦しめたいんだろ!間違いなくこういうことはみな俺の回復の深刻な妨げになっているぞ。俺を絶えずいらいらさせているんだから。

 

 ゾーシモフはさっき出てったじゃないか、俺をいらいらさせないように!構わないでくれよ、頼むからさ、お前も!それにだ、お前はどんな権利があって俺を拘束するんだ?お前には、俺が今や完全にまともな頭で話をしているのが分からないって言うのか?お前が俺に付きまとわないで放っておくようにするにはどうすればいいのか教えてくれ、頼むから。たとえ恩知らずと言われようと、下劣と言われようと、とにかくみんな放っておいてくれ、お願いだから、放っておいてくれ!放っておいてくれ!放っておいてくれ!」

 

 これからすべての毒をぶちまけられると思っておだやかに始めたものの、最後は先のルージンとの時のように、息切れして無我夢中の状態になった。

 

 ラズミーヒンは立ったまましばらく考えると手を放した。

 

 「とっとと消え失せろ!」ほとんど物思いにふけりながら彼は小さな声で言った。「待てよ!」ラスコーリニコフがその場から動こうとした時、突然彼が吠え出した。「俺の言うことを聞け。言っておくがな、お前さんたちは全員一人残らず口だけのほらふき野郎だ!苦しみが始まれば、お前さんたちはそのことで頭がいっぱいになっちまうのさ!そんな時でさえ他の作家をパクッてな。お前さんたちには自らの足で立った生活というものがこれっぽっちもないんだ!鯨の脂からお前さんたちは出来ていて、血の代わりに乳清が流れているのさ!お前さんたちのような奴を俺は誰一人として信じない!お前さんたちがまずやるべきことは、あらゆる状況において、人間らしくなくふるまうということだ!待てっ!」一層激昂して彼は叫んだ。ラスコーリニコフがまた立ち去ろうとしているのを認めたためだ。「最後まで聞け!なあ、俺のとこで今日引っ越し祝いで人が集まるんだが、ひょっとするともう今じゃ来ているかもしれん、そう、で俺は向こうに叔父を残してきた、―今は立ち寄っただけだ―来客を迎えるためにな。さてそこでだ、もしお前が馬鹿野郎でなければ、低俗な馬鹿じゃなく、大馬鹿野郎じゃなく、外国からの翻訳でなければ・・・なあ、ロージャ、思い切って言わせてもらうがな、お前は頭はいいかもしれないが、馬鹿野郎だ!それでもしお前が馬鹿野郎でないのなら、今日俺のところに来て、夜を過ごした方がいいぞ。無駄に外を歩き回ったりするより。外に出って、することなんか何もないだろ!お前用にそりゃもう柔らかい肘掛け椅子を用意しておくからさ、大家さんのとこにあるんだ・・・茶に、仲間・・・いやそうじゃないな、それならソファーベッドに寝かせよう。とにかく俺たちと一緒に過ごせよ・・ゾーシモフも来るぞ。寄ってみないか?」