「罪と罰」81(2-6)

 「いやー随分とまあ恐ろしいことを言いますね!」笑いながらザメートフが言った。 「ただしそれはみなただ言葉の上でのことにすぎなくて、実際にはまあ、うまくいかないでしょうね。言わせてもらいますが、私の考えでは、僕らは言うに及ばず、たとえ経験ある胆の座った人間でも自分自身を当てにすることはできませんよ。何も遠いところを探さなくたって身近にこんな例が。我々の行政区で老婆が殺されました。肝の座った大した奴のようです。真昼間にあらゆるリスクを冒して、一つの奇跡によって難を逃れたんですから。――でもやはりその手は震えました。盗むことはできず、耐え切れませんでした。状況から明らかです・・・」

 

 ラスコーリニコフはあたかも侮辱を感じたかのようであった。

 

 「明らかだって!それじゃそいつを捕まえてくださいよ。やってみてくださいよ。すぐに!」彼は大声を出した。相手の不幸を内心喜びつつザメートフを挑発した。

 

 「そりゃまあ。捕まるでしょう。」

 

 「誰によって?あなたが?あなたが捕まえる?無駄に跳ね回ることになりますよ!だってあなた方にとって大事なポイントは男が金を使っているかどうかですよね。つまり金が無かったのに、突然金を使い始める。その男じゃないはずがないと。それならどんな子供だってあなたを騙せるでしょうね。その気になれば!」

 

 「そこなんですよ。彼らはみなやはりそうするんですよ。」ザメートフが応じた。「計画的に殺す、生活がひどくてそうせざるを得ない、その後すぐ居酒屋で御用となる。金使いがもとで彼らは逮捕される。みながみなあなたのように賢いわけじゃない。あなたはもちろん居酒屋になんて行かないでしょ?」

 

 ラスコーリニコフは眉をひそめてザメートフの方をじっと見た。

                   

 「あなたはどうやら味を占めて、僕がそうした場合どう行動するか知りたくなったのでは?」不満気に彼が尋ねた。

 

 「そうしたいものですね。」ザメートフは毅然とした真面目な調子で答えた。彼の話し方、目付きはあまりにも真剣になっていた。

 

 「とても?」

 

 「とても。」

 

 「いいでしょう。僕ならこうしますね。」そう始めたラスコーリニコフは、また突然自分の顔をザメートフの顔に近づけ、また彼をまじまじと見つめ、またささやき声で話すので、今回ザメートフは身震いすらした。「僕ならこうします。僕なら金と物を取って、そこから離れるなり、すぐに、どこにも寄らず、どこかしらへ歩き出します。ひっそりとした、ただ塀だけがある、ほとんど人気のない場所に。菜園とかそんなような場所に。そこには、その囲まれた場所にはあらかじめ目星をつけておいた、何かこんな石がある。大体1から1.5プードで、どこか隅、塀の脇にあって、建物を建てた時からあるかもしれないそんな石が。この石を少し持ち上げると、その下に小さな窪みがなければなりません。他ならぬこの窪みにすべての物と金を入れるんですから。置いたら石をかぶせる。前と同じ状態になるように。足で踏みつける。そしてその場を離れる。1年でも、2年でも取りに来ない。3年取りに来ない。さあ探してください!確かにあったが、すべて消えてしまった!」

 

 「いかれてる。」ザメートフはなぜだかまたほぼささやき声でそう口にし、なぜだか突然ラスコーリニコフから離れた。彼の目がらんらんとし始めたのだ。顔面蒼白になり、上唇は震え、それは跳ねるような動きになった。彼はできるだけザメートフの方に身を傾け、唇を僅かに動かし始めた。声には出していなかった。そんな状態が約30秒間続いた。彼は何をしているのか分かっていたが、自分を抑えることはできなかった。身も凍るような言葉が、ドアにかかったあの時のかんぬきのように、彼の唇の上でしきりに飛び跳ねていた。さあもう口が滑る。さあもう抑えられない。さあもう言葉になって出てくる!

 

 「ところでもし僕が老婆とリザヴェータを殺したのだとしたら?」突然彼はそう言うと我に返った。

 

 ザメートフはびくびくしながら彼の方に目をやるとテーブルクロスのように真っ青になった。彼の顔は笑顔でひん曲がっていた。

 

 「そんなことが本当に有り得るんですか?」かろうじて聞き取れる声で彼は言った。

 

 ラスコーリニコフは意地の悪そうな目付きで彼の方を見た。

 

 「正直に言ってください。信じたでしょ?え?違いますか?」

 

 「いえ全く!今はもう前よりずっと信じていませんよ!」あわててザメートフが言った。

 

 「とうとう嵌りましたね!小すずめが捕まった。つまり以前は信じていた。今はもう“前よりずっと信じていない”んですから?」

 

 「そんなことは全く無い!」ザメートフは叫んだ。明らかに困惑していた。「あなたはこれがために僕を脅していたんですか、ここに誘導するために?」

 

 「それなら信じていないんですね?ではあなた方は僕のいないところで何を話し始めたんですか、僕があの時署から出て行った時?では何のために火薬中尉は僕が失神した後尋問したんでしょう?おい君」彼は立ち上がりつつ帽子を取ると大声で給仕を呼んだ。「いくらだい?」

 

 「全部で30コペイカでございます。」と給仕は駆け寄りつつ答えた。

 

 「でこれは君のウォッカの分としてもう20コペイカ。随分とまあ金があること!」彼は紙幣の握られた震える手をザメートフの方に伸ばした。「赤色のと青色のとで25ルーブル。いったいどこから?新しい服はどこから来た?金なんか全然なかったのはよくご存知ですもんね!家主にはもう尋ねたんでしょう・・・さっ、もう十分だ!Assez causé![おしゃべりが過ぎた!(フランス語)]最高に愉快でしたよ!・・」