「罪と罰」11(1−2)

 「旦那様」彼は厳粛と言ってもいい調子で切り出した。「貧乏は悪徳ではない、これは真実です。私は知っております、飲酒もまた美徳ではありません、そしてこちらにはより一層真実が含まれております。ですが赤貧は、旦那様、赤貧は悪徳でございます。貧乏でいるうちは、あなたはまだ生まれ持った感情の品位を保持することもできましょう、ですが赤貧となればどんな人でも絶対に無理です。赤貧に対しては杖で追い出されることさえされません、箒で人間社会から掃き出されるのです、そうすることによってより侮辱的にするためにです。それが当然なのです、と申しますのも私が赤貧であれば、まず私自身が自分を侮辱するつもりでいるからであります。それで居酒屋ってわけですよ!旦那様、一月前私の妻をレベジャートニコフ氏が殴ったんです。ですが妻が私のようなわけにいくはずもないじゃないですか!お分かりになりますか。重ねてお尋ねしてもよろしいでしょうか、つまり、単なる好奇心からということになってしまうのですが。ネヴァ川で野宿されたことありますか、干草船で。」