「罪と罰」4(1−1)

 通りは猛烈に暑かった。それに加えてむんむんする熱気、人混み、至る所にある漆喰、建築用の足場、レンガ、ほこり、それに別荘を借りることのできないペテルブルク人であれば誰でも知っているあの独特な夏の臭気、――こうしたものが一斉に、それでなくてもすでに乱れている青年の神経を不愉快に刺激した。都市のこの辺りに取り分け多い大衆酒場から漂ってくるどうにも耐え難い悪臭、それに平日だというのにしきりに出会う酔っぱらい、これらが場景の不快極まりない陰気な色調を決定づけていた。甚だしい嫌悪感が一瞬、青年の端正な顔に現れた。ちなみに彼は素晴らしい男前で、美しい黒い瞳を持ち、髪は濃い亜麻色、身長は平均より高く、痩せ型でスタイルが良かった。しかし彼はすぐにある種の深い物思いに、より正確には、ある忘我の境地とさえ言える状態に入り込んだ。そしてもはや周りのことには気づかず、また自分の存在が気づかれないよう望みつつ歩き出した。時々彼は何やらぶつぶつひとりごとを言うだけだったが、それはついさっき自分自身で認めたモノローグの習癖のためであった。まさにこの時、彼は考えが時折入り乱れること、そして自身が非常に弱っていることを自分でも意識していた。ほとんど何も食べていない状態は二日目に入っていたのである。